歯周病の治療

顎の骨を溶かしてしまう歯周病について

歯周病とは

歯はあごの骨に植わるような形でお口の中に存在しており、あごの骨がしっかりとしていないと、歯が揺れ動いてしまいます。歯周病になると、あごの骨が炎症を起こして徐々に骨の量が少なくなっていくため、歯の支えが少なくなり揺れ動くようになってしまいます。

人間の身体は、新陳代謝により常に新しい細胞に置き換わっており、あごの骨も同じように定期的に置き換わっています。しかし、歯周病に感染すると歯周病菌が生み出す毒素の影響によって、骨を壊す作用と骨を作る作用のバランスが崩れるため、どんどん骨が溶けていってしまい、最終的には支えの失った歯が抜けてしまいます。このような歯周病の症状は初期段階では痛みがほとんど無いため、「静かな病」と呼ばれています。

歯周病の治療法

歯周病の原因となる細菌は、健康な人のお口の中にも一定数存在します。その細菌がなんらかの原因によって活発に活動し増殖してしまうと歯周病が進行していきます。そのため、歯周病の原因となる汚れを除去して細菌の絶対数を少なくしていくことで改善することができます。

お口の汚れの除去は、歯科医院で行う治療と歯磨きの励行が重要になります。日々の生活の中で汚れは少しずつ溜まっていくため、どちらか片方だけを行なっても歯周病は改善していきません。歯周病で歯が抜けてしまわないように、日々のセルフケアと定期的な歯医者の受診が重要です。

歯周病の原因となるお口の汚れ

歯垢（プラーク）

歯垢は、食事や唾液の減少などをきっかけにして増殖していく細菌の塊です。白っぽい見た目で柔らかく、歯と歯の隙間や歯と歯ぐきの境目（歯頸部）に溜まります。基本的に細菌の塊で構成されているので、残しておくと悪影響があります。ネバネバとしているため勝手に取れる事も少なく、うがいでも落ちません。健康不健康に関係なく普段の生活で発生してしまうため、日々の歯磨きでしっかり取り除く必要があります。

歯石（しせき）

数日間プラークが放置されると、プラークは唾液中のリン酸やカルシウムと結合して石のように硬くなります。硬くなったプラークのことを歯石と言い、プラークと違い歯磨きで取り除くのが難しいのが特徴です。

歯石は細菌が固まったものなのでそれ自体は毒素を出さないですが、歯石のざらざらした表面は歯垢を溜めやすくしてしまいます。炎症を助長してしまうので、歯周病の主な原因として扱われています。

歯肉縁下歯石（しにくえんかしせき）

見える部分に溜まる歯石は乳白色〜黄色っぽい色をしていますが、歯肉縁下歯石（しにくえんかしせき）は目視できない歯茎よりも下の部分にできる歯石です。この歯石は血液などと結合して作られるため、黒っぽい色をしていることが特徴です。

歯肉縁下歯石は作られるスピードが遅いですが、固く付着するため取り除くことが難しく、放っておくとどんどん歯の下方向に形成されていくため、炎症によってあごの骨の破壊も進行させてしまいます。

歯周病の症状

口臭の悪化

歯周病は口臭の原因になります。歯周病にかかったお口は特有のイヤな臭いを出してしまいます。食事による口臭とはまったく別の原因のため、歯医者での治療を進めない限り口臭が改善できません。

歯茎からの出血

歯周病にかかると歯茎が常に炎症を起こしている状態になるため、赤く腫れてぶよぶよとした見た目になります。ほんの少しの刺激でも出血をするようになってしまいます。

歯の動揺・脱落

歯周病が進行するとあごの骨が破壊されていくため、支えを失った歯が揺れるようになります。最終的に留まることができなくなった歯はポロっと抜けてしまします。歯周病によって抜けてしまった歯を元に戻す方法はありません。

糖尿病の進行

歯周病による炎症が続くと「炎症サイトカイン」という物質が多く生産され血流に乗り全身に行き渡ります。この物質によってインスリンの働きが阻害され、糖尿病が進行することが知られています。歯周病治療を行うことで、HbA1c（血糖の指標）を下げることができる事も知られています。

虫歯と歯周病の違い

歯周病は、同じく歯の病である虫歯と混同されがちですが、この2つの症状は全く別の細菌による病気であり、虫歯になっていないからといって歯周病にもならないとは限りません。逆も同じで、歯周病になっていない健康的な歯茎・骨の状態でも虫歯に罹ることもあります。

両方ともお口の中をしっかり清掃していない場合に起こりやすくなる症状であることは確かですが、特に歯周病は身体の免疫力が低下し始める30代以降に発症しやすいことが研究などから判明しています。セルフケアの出来不出来に関わらず、30〜40代になったらこまめな検診で健康を維持していく必要があります。少しでも歯や歯茎の不調を感じたら歯科医院を受診するようにしましょう。

歯周病の治療法

歯科衛生士による歯周病治療

歯周病で最も優先される治療は、歯石を取り除くスケーリング治療（歯石取り）です。歯科医院では、歯科衛生士による歯石取りによって歯周病の改善を進めることができます。

また、歯茎よりも下にできた縁下歯石はSRP（スケーリング&ルートプレーニング）によってきれいに取り除いていきます。歯周病改善のための治療は保険診療で行うことができるため、歯科衛生士による歯周病治療は最も専門的で安価に歯周病を治していくことができる方法といえます。

歯科医師による外科的治療

歯周病の症状が重度の場合、歯科衛生士による歯石除去だけでは症状が改善しない場合があります。そのような状態の患者様に対して、歯科医師が歯周病治療に必要と判断した場合、外科的な歯周病治療を行うことがあります。

具体的には、歯茎を切開して実際に付着した縁下歯石を目視しながら取り除く歯周外科治療などがあり、診断によって保険適用となる場合もあります。また、歯周病の改善には歯石や細菌の徹底的な除去のほかに、健康な歯肉や骨の存在も欠かせません。当院では自由診療にて歯肉のボリュームを増やす歯肉移植手術（FGG・CTGなど）や、骨のボリュームを増やす骨造成手術（GBR・エムドゲインなど）も対応可能です。患者様の症状や選択される治療方法によってご提案できる治療がありますので、お気軽にご相談ください。